2012年6月9日土曜日

読書レビュー:「トーマの心臓」


本を読むことはまずまず好きだと自己評価している管理人です。
ただ、子供の頃は夏休みの読書感想文のとき以外で自分から読書をした記憶は一切ありません。外で遊ぶ方が楽しかったからです。
率先的に本を読むようになったのは中学生の頃でしょうか。初めはテレビで見ていたアニメの原作が小説だと知って、それに手を伸ばしたのがきっかけでした。 今で言うところのライトノベル、当時はティーンズ文庫と呼ばれていたジャンル(?)だったと思います。
その後、高校受験を控えて部活を引退すると、気分転換を兼ねて兄弟が持っていた小説を漁りはじめることになります。 ただ、高校生までは本が自由に買えるほどお小遣いに余裕がなかったので、積極的に読書をしたのは大学生になってからでした。
基本的に小説だけを読みます。

ビジネス・自己啓発関連の本はどうもしっくりこないし、読書に知識や教養を求めようとはせず、どちらかといえば使い勝手の良い暇潰しという認識だからでしょう。よく読んでいた頃は年間で150冊弱くらいという記録が残っています。本の虫と呼ばれるほどの読書量ではないですし、再読することが多いので守備範囲は狭いはずです。最近ではその量も1/10程度に減っています。


前置きが長くなりました。
というわけで、今回は森博嗣氏の「トーマの心臓」を読んだのでその感想を書いていきます。
森博嗣氏は私が好きな作家さんでして、全部ではありませんが同氏の作品は大体目を通しています。 そして、この「トーマの心臓」という作品は、元々は萩尾望都氏が描いた漫画をノベライズ化したものになります。 「トーマの心臓」や「ポーの一族」などは萩尾作品では有名どころですよね。
森博嗣氏ファンの間では、森氏は萩尾氏を崇拝しているというのはほぼ周知の事実ですので、これが発表されたときは感慨に耽った人もいることでしょう。


さて、話の内容はというと、端的に言えば、寮生活を送っている少年たちの身に起こった出来事をベースに彼らの心情が描かれた作品になります。
ネタバレを気にする方もいるでしょうし、物語の本題はそこではないと感じたのでかなりボカして書いています。
私は原作の世代ではないのでよく分かりませんが、見方によっては"同性に対する思慕"、いわゆるBL系の先駆けになる作品だったのではと想像します。 これは萩尾作品でよく出てくるキーワードの1つでしょう。
とはいえ、生々しい描写があるわけでもないので、この表現に異議を唱える人も多いかもしれませんが、個人的感想ですのでそのあたりは悪しからず…。
「トーマの心臓」は原作も読んでいますが、全体的に綺麗とか、爽やかとか言った印象を持った作品です。 色で例えると、ビビットよりもパステルという感覚が近いと思います。 森博嗣氏はそういった雰囲気の作品を継承し、シンプルに書き上げられていたように感じました。 簡単に言うと、"森博嗣らしいトーマの心臓"というところでしょうか。 森氏は自身の作品(「スカイクロラ」シリーズなど)でも似たような世界観を書いているので、それがマッチしたのだろうと思います。 本作の設定が日本になっていたのは、「これはあくまでもオリジナルとは違うのだ」という森氏の萩尾へのリスペクトが込められているように私は感じました。 若干翳りがあるのに、最後にはどこか清々しい気分になる。そんな作品でしたね。

※余談ですが、原作「トーマの心臓」は恩田陸氏の「ネバーランド」でもオマージュされているという話です。
森博嗣ファンの方や、かつて原作を読まれた方はもちろん、そうではない方々も原作と合わせて一度読んでみてはいかがでしょうか。


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